米ブロードウェイ演劇界最大の祭典、第78回トニー賞(2025年)のノミネーションが発表され、注目作や人気俳優の出演作がまさかの落選を喫する波乱の展開となった。
デンゼル・ワシントンとジェイク・ギレンホールが共演し、チケットの売り上げでも好調な『オセロ』は、演技部門を含めて一切ノミネートされず。その平均チケット価格は先週時点で業界最高水準の約374ドルを記録していたが、評価の分かれる批評内容が影響したと見られている。
また、イドゥナ・メンゼル主演の新作ミュージカル『Redwood』や、ニック・ジョナスとエイドリアン・ウォーレンが出演する『The Last Five Years』も全くノミネートされなかった。ロバート・ダウニー・Jr.がブロードウェイデビューを果たした『McNeal』も、期待に反して無冠となった。
一方で、ジョージ・クルーニーが共同脚本・主演を務めた『Good Night, and Good Luck』は俳優部門でノミネートされたが、作品賞(演劇部門)は逃した。ブロードウェイで高い興行成績を記録していたにもかかわらず、作品としての評価は届かなかった形だ。
『グレンギャリー・グレン・ロス』も復活演劇賞にノミネートされなかったが、主演のボブ・オデンカークは俳優賞に名を連ねた。共演のキーラン・カルキン、ビル・バーにはノミネーションがなかった。
また、サラ・スヌークが単独で主演する『ドリアン・グレイの肖像』では、彼女自身がトニー賞ノミネートを果たしたものの、作品賞には選ばれず。同作では2024年のローレンス・オリヴィエ賞(英)を受賞しており、今回も注目を集めていた。
意外な結果となったのは、2024年オリヴィエ賞で最優秀新作演劇賞を受賞した『ストレンジャー・シングス:ザ・ファースト・シャドウ』が、トニー賞の作品賞部門では候補外となったことだ。代わりに『English』『The Hills of California』『John Proctor is the Villain』『Oh, Mary』『Purpose』といったオリジナルIP作品が選出されている。
さらに『ロミオ+ジュリエット』は復活演劇賞にノミネートされたが、主演のレイチェル・ゼグラーとキット・コナーは個人賞に絡まなかった。
その中で、ポジティブなサプライズも。人気バンド「Lawrence」のグレイシー・ローレンスが、ブロードウェイ・ミュージカル初出演作『Just In Time』でトニー賞初ノミネートを獲得。彼女が演じるのは歌手コニー・フランシス役で、共演のジョナサン・グロフも同作でノミネートされた。
また、ミュージカル『A Wonderful World』でルイ・アームストロングを演じたジェームズ・モンロー・アイグルハートも、同作唯一のノミネーションを得た。同作は昨年11月に開幕し、今年2月に早期終演を迎えている。
音楽部門では人気作品『Smash』や『The Last Five Years』のスコアが著名であるにも関わらず、いずれも今年はスコア賞の対象外となった。その代わりにノミネートされたのは、『Dead Outlaw』『Death Becomes Her』『Maybe Happy Ending』『Operation Mincemeat』『Real Women Have Curves』の5作品だった。